ノミネート2009

No.2 井沢知子

”チーム医療を推進するがん患者の心強きサポーター”

現在の職業:
京都大学付属病院 看護師 がん看護専門看護師

推薦文:
 私は、賞の候補者に伊沢知子さんを推薦します。彼女は、私が取り組んでいるチーム医療推進のためのワークショップを開催する仲間として5年間共に活動をしてきました。

 井沢君は、数年の臨床経験の後、「患者の視点」を学び直す必要性を感じ、同志社大学文学部で「患者と社会とのつながり」の重要性について研究されました。その後、研究成果をがん看護の臨床現場に生かすべく、看護系大学院の専門看護師養成コースに進学、現在はがん看護専門看護師として活躍されています。

 井沢君は患者のQOL改善のために何ができるかを常に考え、これまで活動してきました。リンパ節切除によって引き起こされる「リンパ浮腫」は、多くの患者が後遺症として苦しむにもかかわらず、国内の医療者側の関心が低いことが問題となっていました。がん患者のQOLを大きく左右するこの問題に井沢君は着目し、リンパ浮腫の改善に関する施術法や専門知識を修得するために2003年に単身米国に赴き、リンパセラピストコースを修了されました。さらに、看護にリンパドレナージ技術を取り入れるという独創的な看護介入研究を行い、患者自身による浮腫の管理・改善を啓蒙する活動をDVD作成や各種講習会を通じて積極的におこなっています。これらの活動と研究成果が高く評価され、日本看護科学学会より奨励賞が授与されています。

 さらに井沢君は、チーム医療を推進する活動も積極的に行っており、2004年にはテキサス大学MDアンダーソンがんセンターのJapan Team Oncology Program (JTOP) というチーム医療ワークショップに参加しました。JTOPには毎年60名の医師・薬剤師・看護師が参加し、模擬症例をチームで検討しながら各職種の役割や協働、リーダーシップを学びます。また、将来の理想のチーム医療を推進すべき優秀な人材にはMDアンダーソンへの留学機会が与えられます。井沢君は見事に選抜され、2005年にがん医療に積極的に参画する看護を米国で学ばれました。帰国後、国内の看護師がもっと積極的にがん医療に参画することの重要性を広く啓蒙しています。患者側に近い看護師の立場から、チーム医療の中での患者の擁護と教育を効果的に行っていく必要性を訴え、国内がん看護システムの改善に尽力されています。これまでに、彼女が勤務していた兵庫県立がんセンターでは、他職種チームによるカンファレンスに看護師が参加するシステムを構築し、がん患者向け学習会を開催したりと、その活動は多くの看護師に刺激を与えてきました。将来、大学病院にがんセンターを設立するという構想があり、より大きな組織でがんチーム医療に挑戦しようという思いから、井沢君は2008年4月に京都大学医学部付属病院に転勤され、現在も奮闘しています。

 集学的な治療への理解を深め、日本の看護師に様々な刺激を与えてきたこれらの井沢君の活動が、看護界に多大な貢献をしている点は疑いの余地がないところです。以上の業績から、井沢知子君は顕彰するにふさわしい傑出した人物であると考え、ここに推薦します。

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