第2回ノミネート 2010
No.5 東海林朝子
”生活者の思いと、自己決定を大切にするナース”
現在の職業:
「在宅重症心身障害児訪問看護事業 東部訪問看護事業部」訪問看護師 「難病のこども支援全国ネットワーク」電話相談員
推薦文:
私が初めて東海林さんにあったのは、11年前東京の重症心身障害児訪問看護事業部だった。彼女は私の知っている従来の看護師とは違う考えの持ち主だった。当時は、看護師は患者の指導者であり、患者はそれを聞く立場という考えが一般的であったように思う。相手のためといいながら、自分だったら、自分がこう思うから、という考えで患者に接しているように思えた。東海林さんは患者の表面的な行動をみて医療的な対応するのではなく、なんでこういう行動をしたのか、と、その背景をまず考えるのである。新鮮な驚きを感じた。
東海林さんには重度の障害をもったお子さんがいる。今に至るまで、大いに悩み、辛い時期を過ごしたこともある。時に自分の子どもを受け入れらず、そして医療者にもその苦しみを理解してもらえない辛さも味わってきたそうだ。そんな経験があったからこそ、「自分が理解してもらえなかったからこそ、自分は理解しようと思うようになった」と言う。
こんなことがあった。
初めて在宅に帰る事ができた家族が、この機会に子ども(重度の障害のある)を連れて旅行に行きたいと東海林さんに言った。通常の医療の判断であれば絶対無理という状況だった。しかし、東海林さんはそれを伝えずに「どこに行きたいの?」「どうやって行きたい?」と一緒に旅行のプランを立て始めた。そして、詳細を詰めていくと、その実現の難しさに(家族)は気付き始める。。。
患者自らが気付いて、そして決断することが大事だと東海林さんは言う。医療者に頭ごなしに否定されたとしたら、たとえその意見が正しいとしても、患者と医療者の信頼関係は築けない、まして患者、家族の思いは宙に浮いたままになってしまう。相手の気持ちを理解し、それを受け止めることがまず第一歩なのだ。
「いくら医療的に良い看護計画であっても、患者が良いと思えなければ意味がない、患者が良いと思えるのであれば、たとえ医療的な難しさがあっても、しっかり患者と 向きあって検討し、作り上げたものが最良の看護計画です。」と東海林さんは言う。今日も訪問看護の現場や「難病のこども支援ネットワーク」の電話相談員など様々な場所で、一人一人の患者さん・家族と向き合い、一緒に寄り添い考えている姿が目に浮かぶ。