第2回ノミネート 2010
No.11 保田淳子
”ドアはノックしないと開かない!”
現在の職業:
日本ノーリフト協会代表 滋賀医科大学医学部衛生学博士課程 看護師 助産師 保健師
推薦文:
皆さんは、ノーリフト(持ち上げない看護)という言葉を聞いたことがありますか?保田さんは、オーストラリアで看護師として勤務した経験を元に、日本でノーリフトを根付かせようと協会を設立して活動しています。
私が大学病院に勤務していた2000年頃、日本でも患者さんを移動させるためにリフト(機械)が導入されました。大きな見慣れない機械を見よう見まね、たくさんの時間と労力を費やして操作をしたものです。しかし、使いなれないリフトで患者さんを移動させるより、人の手で移動させる方が楽、と次第にリフトは廊下でカバーをかけられ、埃をかぶっていました。
保田さんに出会って私が思い出したのは、あの廊下の大きなリフトたち。今更なぜノーリフトなのだろう。正直そう思いました。
しかし、保田さんの話を聞いた私の気持ちは180度変わりました。それは、ノーリフトが私たちに何をもたらしてくれるのか、はっきりと理解できたからでした。
・看護師や介護師、老老介護の高齢者、障害児を育てる両親など介護者の腰痛軽減になる
・リフトは安定してるので、転んだり、落ちたりする危険性が減る
・人の手で持ち上げられると不安定なため、体が緊張する、逆にリフトは危険ではないので、持ち上げられている人がリラックスできる
・リラックスできれば、麻痺や体のこわばりが進行しない
・人が移動させるより、機械が移動させる方が行動範囲が広い
・その結果、患者さんの自立度があがり、リハビリ効果も広がる
・寝たきりを防ぐ手段の一つとなる
保田さんの言葉と、きらきらと輝く目は、明るい未来を描いていました。歩けない人には車いすがあるように、動くことに不自由がある場合はリフトを利用する。リフトを使うことが当たり前になるまでには時間が必要であるけれど、使いはじめると 車いすの様に介助時には なくてはならいものとなる。そして、使うことで得られるメリットがたくさんあることに気が付く。看護師・介護師が自分たちの身を守ることが出来なければ、結果的に患者さんが不利益をこうむる。患者さんを介護する家族にも同じ負担を強いることになる。
保田さんは、自分の原動力は21歳の時に婚約者を亡くした経験と父を看取った経験だと言います。大切な人の闘病生活を通じて、自分の弱さやわがままを嫌と言うほど知って、その中から「人は自立しないと他人を助けられない」という信念を持ったこと。これが今の彼女を動かしています。
リフトがあればいいのではない、人が変わらなければいけない。そのためには、保田さんのように情熱と知識を持って訴え、人を変えていく力を持つ人が必要です。ノーリフトが広く知られ、一人でも多くのリフトを必要としている人へ届くことを期待しています。