今年の看護師像

市民が求める看護師像2010発表

NPO法人楽患ねっと(所在地:東京都足立区、理事長:岩本貴)は、 一般市民の投票によって"市民が看護に求めていることを実践している看護師"を決定する 第2回ナースオブザイヤー(HP:www.noty.jp 主催:NPO法人楽患ねっと 後援:社団法人日本看護協会)にて 投票の際に記述する1764票(882人)からの投票理由を元に"市民が求める看護師像2010"を明らかにしました。

"市民が求める看護師像2010"は、
"患者に希望を灯すナース" です。

患者や医療者として長く医療に関わっていると厳しい現実に身動きがとれなくなります。現在の医療でできること、病院の中でできること、これらが固定概念のように頭に残るのです。一方、多くの市民も、患者のたらい回し、医師や看護師不足、病院の倒産といった医療崩壊のニュースは枚挙にいとまなく、医療に対する不安を増大しています。

今回のナースオブザイヤーに寄せられた投票理由には、
「夢、病気の子どもたちはえてしてそれを失いがちです。どうせ、だめ…そんな足かせを解いてくださりそう」
「医療にとって正しいことが、必ずしも患者にとって楽しいこと(=正しいこと)とは限らない。そんなことに気づかせてもらえる」
「ケアをされる側にとっても、そしてする側にとっても、正しい知識を以ってすれば双方に有益な革命」
「しゃべることもできず意思疎通することもできない。そんな患者さんたちの『生きている心』のケアにつとめ、心で何かを感じてもらおうとしている」
「連れて帰っても一人ではどうすることも出来ない私でしたが、こうして彼女の実行力を見ていると、どんなにか救われる人がいるだろうかと応援したくなります」
「自分はどうやって死んで行くのだろう・・・誰も知らない病院で死んで行くのだろうか。その将来を考えたときとても不安になります。自分の家で穏やかに死ぬことが、なかなか実現できていない日本では、とても重要な役割をされていると思いました。」
とあります。

呼吸器という大きな機器を付けなければ呼吸すら出来なくなった大切な人がいます。呼吸器が付いていることで自宅に帰ることは困難になり、声を出すことも、口から食事を取ることも出来なくなります。呼吸器を外すことは難しいと言われても、これさえ外せれば少しでも今より良い生活が出来るのではないかとの思いが募ります。そんな時、積極的に呼吸器を外すことに専念してくれる病院があります。その入院生活はこれまでの忙しい病院とは違ってリラックスできる場です。それは患者さんと家族にとって大きな救いとなりました。

制限の多い病院の中では見ることの少ない子どもの笑顔を引き出すために、重い病気を患って、病院の外に出ることはできないと思っている子どもに旅の楽しさを味わってもらうために、大自然の中に子どもを連れていくことに人生をかけているナースがいます。

腰痛で看護師をやめる人が多くいます。老老介護で介護者が疲れきって家で看ることを諦める人がいます。障害をもつ子どもが成長することで介護の負担が増えるため、大きくなって欲しくない、介護者の体がもたない、と思ってしまう現実があります。看護・介護・家族など、ケアする人の負荷を軽減することを進める、そのために、とにかく人力で「持ちあげないこと」を追求し、時には機器を使う、そのことが引いては患者のためになる。という目からウロコが落ちる、ノーリフトの考え方がありました。

看護師は、患者さんの一番良いことを知っていて、正しい道を指し示すものだ、と思っている人が看護師にも患者さんにも多いと思います。しかし、真に患者さんが納得して、自分の道を歩んでいくためには、"お任せではなく自分も決定に関わる"ことが重要です。その信念の元に、患者さんや家族の本音に寄り添い、当事者が納得して進んでいけるよう支援する看護を追及している人がいます。

厳しい医療の現実の中でも、心のどこかで市民はささやかな希望を求め、それに応えるナースに喝采をおくるのだと感じました。これらの思いを"患者に希望を灯すナース"と纏めました。